事例Ⅳは9月中に固める — 経営分析・CVP・NPVの優先順位
2次筆記試験まで残り2か月を切った。この時期に事例Ⅳへ時間を割く価値が高いのは、4事例のなかで唯一、努力と得点の相関が素直だからだ。事例Ⅰ〜Ⅲは書き方の巧拙で振れるが、事例Ⅳは計算が合えば点になる。逆に言えば、ここを落とすと他事例の出来で取り返しにくい。
範囲は広く見えるが、毎年出るところは限られている。9月は手を広げず、次の3つに絞って固めるのが効率的だ。
優先順位1:経営分析(第1問)
最優先。理由は、ほぼ毎年出て、配点が大きく、かつ確実に取れるから。
やることは決まっている。財務諸表から指標を計算し、悪い(あるいは良い)ものを2〜3つ選んで、60字程度で理由を書く。この「選ぶ」と「書く」の型ができていれば、本番で迷う時間がほぼゼロになる。
固めておくべきこと:
- 収益性・効率性・安全性から1つずつ選ぶのが基本形。3つとも収益性から選ぶと与件の読み違いを疑われる。
- 使う指標をあらかじめ絞っておく。売上高総利益率/売上高営業利益率、有形固定資産回転率/棚卸資産回転率、自己資本比率/当座比率あたりを持っておけば大半に対応できる。毎回ゼロから考えない。
- 記述の型を1つ持つ。「〜のため、〜が低く(高く)、収益性が低い(高い)」のような骨格を用意し、与件の言葉を差し込むだけにする。
- 単位と端数処理の指示を読む癖。ここでの失点は実力と無関係で、いちばんもったいない。
過去問5年分をこの型で解き、指標選択が採点基準と大きくずれないところまで持っていけば、この論点は9月中に完了と考えてよい。
優先順位2:CVP分析(損益分岐点)
2番目。理由は、出題頻度が高く、計算が短く、部分点を拾いやすいから。
変動費・固定費の分解ができれば、あとは公式の当てはめに近い。詰まるとすればここ:
- 変動費率か貢献利益率か、どちらで解くかを最初に決める。行ったり来たりすると時間を食う。
- セグメント別・製品別になった瞬間に難度が上がる。共通固定費の扱い(配賦するのか、しないのか)を問題文がどう指示しているかを必ず確認する。
- 「目標利益を達成する売上高」「安全余裕率」など、問われ方のバリエーションを一通り触れておく。計算の中身は同じで、聞き方が違うだけのことが多い。
CVPは1問あたりの所要時間が短いので、本番の時間配分でも早めに回収したい領域になる。
優先順位3:NPV(正味現在価値)
3番目。ただし「捨てる」のではなく「部分点を取りに行く」論点。
事例Ⅳでいちばん時間を食い、いちばん完答しにくいのがここだ。設問が多段構成で、途中でひとつ間違えると以降が連鎖して崩れる。だからこそ、方針を先に決めておく価値が大きい。
現実的な戦い方:
- タイムテーブルを必ず書く。年度を横軸に、税引後CF、減価償却費の節税効果、運転資本の増減、残存価額を並べる。頭の中で処理しようとすると必ず落とす。
- 減価償却の節税効果と、運転資本の回収を落とさない。ここは頻出で、かつ忘れやすい。
- 途中式を必ず残す。完答できなくても、CFの算出過程が書いてあれば部分点の可能性が残る。答えだけ書いて外すのが最悪。
- 本番では最後に回すと決めておく。先に手をつけて沼にはまり、取れるはずの経営分析やCVPを落とすのが典型的な失敗パターンだ。
9月に手を広げなくてよいもの
デリバティブ、為替予約、複雑な企業価値評価などは、出題されたとしても配点が限定的で、対策コストに見合わない。他の受験生も取れない問題は、取れなくても差がつかない。9月は上の3論点の精度を上げるほうが期待値が高い。
10月に入って上の3つが安定したなら、そのとき初めて周辺論点に触れればよい。
進め方の目安
- 前半2週間:経営分析を過去問5年分。指標選択と記述の型を固める。
- 後半2週間:CVPとNPVを論点別に。年度をまたいで同じ論点を連続で解くと型が身につきやすい。
- 週1回:80分通しで1事例。論点別演習だけだと、本番の時間圧力に対応できない。
事例Ⅳは、直前期に詰め込んで伸びる科目ではない。逆に、9月に型ができていれば10月は他事例に時間を回せる。ここが、この時期に事例Ⅳを優先する最大の理由だ。
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